公共工事や官公庁との取引で、「入札保証金」と「契約保証金」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。どちらも似たようなものに感じるかもしれませんが、目的、金額、そして免除条件には大きな違いがあります。
本記事では、入札前に納める「入札保証金」と、契約時に必要となる「契約保証金」の違いを分かりやすく解説します。金額の計算方法、免除条件、資金計画についても触れていきます。
これらの知識を習得することで、入札手続きの負担を減らし、資金繰りを最適化できます。ぜひ最後までお読みいただき、ビジネスチャンスを最大限に活かしてください。
入札保証金と契約保証金の違いとは
入札保証金とは
入札保証金とは、公共工事などの入札に参加する際に求められるお金のことです。これは、地方自治法や各自治体の契約に関する規則に基づいて定められています。主な目的は、落札後に契約を結ばないといった事態を防ぎ、入札の信頼性を確保することです。
保証金の額は自治体によって異なりますが、一般的には契約金額の見積もりの3%から10%程度とされています。たとえば、東京都の場合、契約金額の3%以上と定められているため、1億円の工事であれば300万円以上の保証金が必要になる場合があります。
納付方法と返還条件
- 現金だけでなく、国債や地方債などの有価証券での納付も可能
- 保険会社の保証書(入札ボンド)を提出する方法も一般的
- 落札できなかった場合や、契約をきちんと履行した場合には、全額が返還される
- 落札後に契約を拒否すると、保証金は没収されてしまうので注意が必要
原則として、納付のタイミングは入札の締め切り前です。電子入札の場合も、指定された期限までに手続きを完了させる必要があります。最近では、保証金が不要となる「ボンド制度」を導入している自治体も増えており、資金繰りの負担を軽減できる選択肢も広がっています。
契約保証金とは
契約保証金は、公共工事や調達の契約において、契約者がきちんと契約を守ることを保証するために設けられた制度です。発注者が契約を結ぶ際に、契約者に対して求めるもので、契約が履行されなかった場合に発生する損害を賠償するための資金となります。
一般的に、契約金額の10%程度を納付するケースが多いです。例えば、1,000万円の契約であれば、約100万円が保証金として必要になることがあります。保証金の計算方法は自治体によって異なり、消費税込みの契約額を基準に計算されることが多いようです。
主な納付方法
- 現金(手形や小切手を含む)
- 国債や地方債などの有価証券
- 銀行保証や保証事業会社の保証書
契約が無事に完了すれば、原則として保証金は全額返還されます。ただし、工事中に不具合が発生したり、遅延が生じた場合には、修繕費用などが差し引かれる可能性もあるため、注意が必要です。
入札保証金と契約保証金の違いとは
入札保証金と契約保証金は、どちらも公共調達の手続きにおいて重要な役割を果たす制度ですが、その目的と運用方法には明確な違いがあります。
入札保証金は、入札に参加するすべての人が事前に納めるお金で、落札後にきちんと契約を結ぶことを約束するためのものです。一方、契約保証金は、落札した人のみが契約時に納めるもので、工事などをきちんと最後までやり遂げることを保証する目的があります。
主な違いのポイント
| 入札保証金 | 契約保証金 | |
| 納付する人 | 参加者全員 | 落札者のみ |
| 返還のタイミング | 不落札時 | 契約完了後 |
| 目的 | 契約の確約 入札に参加する人が、本気で入札に参加しようとしているかを確認する | 履行の保証 落札後に契約が履行されないリスクを減らす |
具体的な金額は自治体によって異なります。入札保証金は、契約保証金の一部として充当される場合が多く、二重に支払う必要がないように配慮されています。
入札保証金振込証明書とは
入札保証金振込証明書とは、入札に参加する企業が、指定された口座にきちんと保証金を振り込んだことを証明する書類です。公共工事や調達案件の入札に参加する際には、この証明書の提出が必須となります。
証明書の発行方法には、主に2つのパターンがあります。1つは、金融機関が発行する振込受領書に、金融機関の受領印を押してもらう方法。もう1つは、電子入札システムで自動的に作成される電子証明書を利用する方法です。
紙の証明書が必要な場合は、以下のものを用意する必要があります。
金融機関が発行した振込票の原本(コピーは不可)
発注機関が指定する証明書用紙
会社の代表者印
振込証明書の有効期限は、入札日当日までです。手続きには余裕をもって対応しましょう。万が一、紛失してしまった場合は、すぐに発注機関に連絡して再発行の手続きを行う必要があります。念のため、コピーを保管しておくことをおすすめします。
電子入札を利用する場合は、振込証明書の代わりに、システム上で電子的な納付確認が行われるため、紙の書類を提出する必要はありません。ただし、電子証明書の発行には、事前の登録と認証手続きが必要です。初めて利用する際は、時間に余裕をもって準備しましょう。
入札保証金の金額
保証金が求められる法的根拠と実務上の目的
入札保証金と契約保証金が求められる法的根拠は、主に会計法と地方自治法にあります。
会計法 第29条の9
契約担当官等は、国と契約を結ぶ者をして、契約金額の百分の十以上の契約保証金を納めさせなければならない。ただし、他の法令に基づき延納が認められる場合において、確実な担保が提供されるとき、その者が物品の売払代金を即納する場合その他政令で定める場合においては、その全部又は一部を納めさせないことができる。
地方自治法施行令 第167条の16
普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体と契約を締結する者をして当該普通地方公共団体の規則で定める率又は額の契約保証金を納めさせなければならない。
地方自治法 第234条の2 第2項
普通地方公共団体が契約の相手方をして契約保証金を納付させた場合において、契約の相手方が契約上の義務を履行しないときは、その契約保証金(政令の定めるところによりその納付に代えて提供された担保を含む。)は、当該普通地方公共団体に帰属するものとする。ただし、損害の賠償又は違約金について契約で別段の定めをしたときは、その定めたところによるものとする。
これらの保証金制度は、公共調達の公正さを保ち、契約がきちんと履行されることを保証するという2つの目的を果たすために設けられています。具体的には、
- 入札に参加する人が、本気で入札に参加しようとしているかを確認する(入札保証金)
- 落札後に契約が履行されないリスクを減らす(契約保証金)
という役割を担っています。特に契約保証金は、落札者が契約を結ばなかった場合に、発注者が被る損害を補填する役割があり、発注者の財政的なリスクを軽減する仕組みとなっています。
近年では、中小企業を支援する目的で、保証金を免除する制度が広がりつつあります。入札保証保険や金融機関の保証書を利用することで、保証金の代わりとすることが認められるようになりました。ただし、免除を受けるためには厳格な審査があり、保証金本来の目的であるリスク管理を損なわない範囲で運用されています。
金額設定の基準と計算方法
入札保証金と契約保証金の金額設定は、地方自治法施行令第167条の14や会計法施行令第14条などに基づいて、契約のリスクを減らすことを目的として定められています。
入札保証金は、原則として入札金額の5%以上と定められています。一方、契約保証金は10%となることが多いです。これは、契約の履行段階で発生するリスクが、入札の時よりも高くなるため、より高い保証金を求める自治体の判断によるものです。
計算方法はシンプルで、1億円の契約の場合、入札保証金は500万円(5%)、契約保証金は1,000万円(10%)となります。ただし、端数処理の方法は自治体によって異なり、10万円未満を切り捨てるといったルールがある場合もあるので注意が必要です。
入札保証金や契約保証金の支払い方法・納付期限
入札保証金や契約保証金の納付は、公共調達において重要な手続きの一つです。ここでは、現金や有価証券を使った具体的な支払い方法と、必ず守らなければならない納付期限について解説します。
支払い方法(現金・有価証券)
入札保証金と契約保証金の支払い方法には、現金を納付する方法と、有価証券で納付する方法の2種類があります。現金で納付する場合は、発注機関が指定する金融機関の窓口で直接支払うか、指定された口座に振り込むことになります。公共工事の場合は、自治体ごとに指定されている金融機関が決められているため、事前に「入札保証金等納付書」を入手して手続きを行う必要があります。
有価証券で納付する場合は、国債や地方債、政府が保証する債券などが対象となります。これらの有価証券は、時価で評価されることになります。例えば、1,000万円の保証金が必要な場合に、時価が額面の90%である債券を提出する場合は、1,111万円分の債券が必要になります。有価証券を利用する際は、発注機関が指定する書類と一緒に提出し、評価額を確認してもらう必要があります。
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 現金 | 手続きが簡単 | 資金繰りに影響が出る |
| 有価証券 | 資金を拘束されない | 評価手続きが複雑 |
実務上では、現金納付は迅速な処理に向いていますが、有価証券を利用すると、現金を動かさずに済むというメリットがあります。ただし、有価証券は相場の変動によって価格が変わるリスクや、評価手続きが煩雑になるというデメリットもあるため、時間に余裕をもって準備することが大切です。
納付期限
入札保証金と契約保証金では、納付期限が異なります。入札保証金は、原則として入札書を提出する期限までに納付する必要があります。具体的には、入札が開始される時間までに、現金または有価証券で納めなければなりません。この期限を過ぎてしまうと、入札が無効となってしまうため注意が必要です。
契約保証金の納付期限は、落札が決定したという通知を受けてから7日以内(休日を含む)とされています。契約を結ぶ前に必ず納付する必要があり、期限を守らない場合は契約の権利を失う可能性があります。
| 項目 | 入札保証金 | 契約保証金 |
|---|---|---|
| 納付期限 | 入札書提出期限まで | 契約締結前(通知後7日以内) |
| 延長可否 | 原則不可 | 事前協議で可能な場合あり |
特別な事情で期限を延長する必要がある場合は、事前に発注機関と相談する必要があります。延長を希望する場合は、書面で申請し、正当な理由を提示しなければなりません。また、延長が認められた場合でも、追加で書類を提出する必要がある場合もあるため、早めに相談するようにしましょう。
入札保証金や契約保証金が免除になる条件
入札保証金や契約保証金は、特定の条件を満たすことで免除される場合があります。過去に契約を履行した実績がある場合や、経営状況が良好な事業者は、必要な書類を提出することで免除の対象となる可能性があります。
免除の基準は、地方自治体や発注機関によって異なりますが、保険会社の保証状や金融機関の保証書を提出することでも、保証金の代わりとして認められる場合があります。ここでは、入札保証金と契約保証金が免除される条件、申請の手続き、審査のプロセスについて詳しく解説していきます。
入札保証金の免除条件
入札保証金が免除される条件は、主に以下のケースです。
保険会社と入札保証保険の契約を結んでいる場合
予算決算及び会計令第77条に基づき、契約書を提出することで、現金を納付する必要がなくなる
金融機関や保証事業会社と保証契約を結んでいる場合
銀行の保証書や保証証券を提出することで、現金の代わりに担保として扱われる
過去に契約を履行した実績がある場合
過去2年間に、国や地方公共団体との間で、同種・同規模の契約を複数回履行した実績がある場合も、免除の対象となることがある
審査の基準や必要な書類は、自治体によって異なります。事前に発注機関の規定を確認するようにしましょう。免除を申請する際には、通常、契約を締結する権限を持つ人が申請書を作成し、関連する証明書を提出する必要があります。
契約保証金の免除条件
契約保証金の免除条件は、自治体や発注機関によって異なりますが、主に以下のようなケースが認められています。
実績に基づく免除要件
契約金額が150万円未満の場合や、過去に国や地方公共団体との契約において、契約をきちんと履行した実績がある場合に免除されることがあります。
代替保証制度の活用
保険会社と履行保証保険契約を結び、保険証書を提出することでも免除が可能です。また、金融機関の保証状を提出する方法もあり、これらの代替手段は、契約保証金と同等の効果があると認められています。ただし、保証状の有効期限は、契約の履行期間全体をカバーしている必要があり、場合によっては更新の手続きが必要になることもあります。
入札保証金以外の保証方法
入札保証金の納付方法は、現金だけではありません。資金繰りの状況に合わせて、さまざまな代替手段を利用できます。代替手段を活用することで、現金を納付するよりも、事業資金への影響を抑えながら入札に参加できます。
入札ボンド制度
入札ボンド制度とは、現金の代わりに、保証会社が発行する保証証書を提出する制度です。公共工事の入札に参加する際に必要な保証金を、現金ではなく信用力でカバーできるため、事業者の資金繰りの負担を軽減できるというメリットがあります。
主な手続きの流れ
保証会社に、会社の登記簿謄本や決算書類などの必要書類を提出する
保証料(入札金額の0.1~0.5%程度)を支払う
発行された保証証書を、入札書類に添付する
この制度は、特に資金調達が難しい中小企業にとって大きなメリットがあります。現金を拘束されずに済むため、運転資金を確保しながら、複数の入札に同時に参加できるという柔軟性が生まれます。ただし、保証会社の審査基準を満たす必要があり、財務状況によっては利用できない場合もあるので注意が必要です。
入札ボンドは、大規模なプロジェクトや長期にわたる入札案件で特に効果を発揮します。現金を納付する場合と比べて、手続き完了後に保証金が返還されるまでの待機期間が発生しないため、資金効率の改善も期待できます。
入札保証金に代わる担保
入札保証金の代わりに担保を提供するという方法も、事業者の資金繰りの負担を減らすために有効な選択肢となります。担保として認められる主な資産としては、国債や地方債などの公共債券、政府保証債券、金融機関が発行する債券などが挙げられます。
中でも、国債や地方債は換金しやすく、発注機関からも受け入れられやすい担保です。銀行が支払いを保証した小切手も、現金と同等とみなされ、手続きが簡単な点がメリットです。
| 担保の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 公共債券 | 国債、地方債、政府保証債券 |
| 金融機関発行 | 銀行債券、信用金庫連合会債券 |
| その他 | 定期預金債権、社債 |
担保の評価額は時価で計算され、発注機関が発行する預り証と交換することで手続きが完了します。ただし、認められる担保の種類や評価方法は自治体によって異なるため、必ず事前に発注機関の規定を確認するようにしましょう。
現金の調達が難しい場合でも、これらの代替手段を活用すれば、入札に参加する機会を逃さずに済みます。担保の種類や手続きの方法を正しく理解し、資金繰りに合わせた柔軟な対応を心がけましょう。
入札保証金の返還
入札保証金は、入札の結果に応じて返還されるか、没収されるかが決まります。
返還の方法や時期は自治体によって異なり、自動的に返還される場合と、申請が必要な場合があります。ここでは、入札保証金の返還条件と手続きについて詳しく解説します。
落札後契約締結した場合や落札出来なかった場合は返還される
入札保証金の返還条件は、落札できたかどうか、そして契約を結んだかどうかによって異なります。落札後に発注者と契約を締結した場合、入札保証金は契約保証金に充当されるか、全額が返還されます。多くの自治体では、契約保証金が必要な場合に限り、入札保証金をそのまま利用する仕組みを採用しており、二重に支払う必要がないようになっています。
落札できなかった場合や、入札への参加を辞退した場合も、原則として全額が返還されます。返還の時期は、入札の結果が確定した後、速やかに処理されるのが一般的ですが、支払い方法によって返還までの時間に差が生じる場合があるので注意が必要です。例えば、クレジットカードで支払った場合は、自治体によっては、いったん引き落としを行った後、後日返金するというケースがあります。
返還の手続きは、自治体によって異なります。主なパターンは以下の2種類です。
自動返還:特に手続きは必要なく、指定した口座に自動的に振り込まれる
申請書を提出:所定の書類を提出した後、返金処理が行われる
返還までの期間は、1週間から1ヶ月程度が一般的ですが、詳細については、各発注機関の規定を確認するようにしましょう。
落札したものの契約を締結しなかった場合は返金されない
落札したにもかかわらず、契約を結ばなかった場合、入札保証金は返還されません。これは、入札保証金が「契約をきちんと締結する」という約束を保証する性質を持っているためです。正当な理由なく契約を拒否した場合、入札保証金は違約金として扱われます。
法律上は、地方自治法施行令第167条の7に基づいて、契約の締結を拒否した場合は契約違反とみなされます。発注者は、落札者から入札保証金を没収する権利を持っており、これには以下の2つの目的があります。
契約違反を抑止する効果
次点の業者と再契約する際に生じる価格差を補填する
具体的な例として、1億円の工事で10%の入札保証金(1,000万円)を納付した場合、契約を拒否すると、この全額が没収されることになります。ただし、災害など、やむを得ない事情がある場合は、一部が返還される可能性もあります。
まとめ
入札保証金と契約保証金は、公共工事や入札取引において重要な役割を果たす制度です。入札保証金は入札に参加する際に必要となり、契約保証金は契約を締結する際に求められます。どちらも一定の条件を満たすことで免除される場合があります。これらの保証金の目的は、契約がきちんと履行されるように、契約不履行のリスクを減らすことです。
金額については、一般的に入札保証金は入札金額の5%程度、契約保証金は契約金額の10%程度とされています。保証金は、現金を納付する方法以外にも、保証状や有価証券で代用することも認められています。また、適切な手続きを完了すれば、保証金は返還されます。

